村田沙耶香『世界99』(上下巻)読書会レポ

8/9(土)に村田沙耶香さんの『世界99 上下巻』(集英社)を課題本にした読書会を開催しました。

場所は天文館図書館交流スペースです。

定員16名で満席でしたが、大雨の影響などで欠席もあり、13名で行いました。

内容的にエグい場面も多く出てくるのでどんな感じの読書会になるかなと思っていましたが、自分にはないいろんな視点やトピックからの感想が出てきて、大変楽しかったです。

ご参加いただいた皆様ありがとうございました!!

以下、簡単なレポというか私の読書会メモになります。※ネタバレありです。

大雑把な箇条書きで説明もだいぶ省いていますがよかったらご笑覧ください。


・続きが気になってあっという間に読み終わった。

・性描写が苦手で上巻の序盤は意外と読み進められたが段々キツくなったが読破。

・普段は紙派だが今回は上下巻で長く通勤中に読み進めたかったので電子で購入。

・集中して読む期間と休みの期間を繰り返しながら読破。

・本が手元に来るのが遅かったため数日しか時間がなかったが読書会という期限があるので強制的に読破。

・矛盾した気持ちが伝わる文章になっていて胸に来るものがあった。

・波のカラスのような鳴き声で感情を出す場面が印象深い。

・空子の「性格がない」というのが最初あまりピンと来なかったが相手によって「呼応」し合わせる習慣は自分にもあるなと思ったので少し共感した。

・音、空子がピョコルンになるきっかけになった不思議な人物。

・普段は、世界や敵に対抗する物語を読むことが多いので、順応する物語を読むのは新鮮だった。

・本の帯には空子が「性格がない」人物と書かれていたが、読んでいてちゃんと「性格」はあるのでは?となった。

 →帯に書かれている「性格がない」の「性格」の定義は何か?

 →空子には、自分の「意志」がないということなのか、「固定した性格」がないということなのか。

・空子が物語の世界ではなく、私たちのいる現実の世界にいるとしたら、何をしているだろうか?

 →いろんな人に合わせられるのでどこかにいそう。

 →自分は空子に近いと思うので、普通にいるのではないだろうか。

・もし『世界99』の世界に行くとしたら、どの時代やコミュニティ世界に行きたいか?

 →できれば行きたくない。

 →空子の幼少の頃の時代。私たちの世界とまだそんない変わらないように見えるから。

 →何も知らないままでいいのなら、「リセット」の前の時代。

 →「ウエガイコク」のこの物語の世界の外。

 →音は唯一、空子たちの世界と「ウエガイコク」との世界を行き来できる存在なので、そのような立場から世界はどう見えるのかは気になる。

・さすがに現実とは違うと思うが、出てくる男性が酷い人ばかり。

・社会の価値観がどんどん変わっていく中で、匠くんが全然変わらないのはなぜか?

 →匠くんは登場時からニートでずっと家にいて外の社会との接点が少ないからではないか。

 →「世界」との向き合い方という点で匠くんも白藤さんも実は同じなのではないか?

 →物語の終盤において、匠くんは世界から排除され、白藤さんは世界から撤退して家で過ごすという構図はとても皮肉で面白く読んだ。

・空子が交際する男性はみんな似ている。

 →似たような人を交際相手に選んでいるのか、空子が交際相手を似たような人間にしているのか。

・空子に共感しながら読んだ。

・空子は空っぽなのではなく自分だけしかない。それは自然なことではないだろうか。

・世界を相対化していくプロセスのなかで「身体」がキーワードになりそう。自分なりに考えていきたい。

・ピョコルンがどんどん進化することによって便利になり生活が楽になるはずなのにむしろ疲れる要素が消えないのが不思議。

・波の危機管理のなさが印象に残った。

 →性被害に遭ってほしくないという大人側の気持ちもわかる一方で、本人の危機管理を上げるにはどうしたらいいのだろうか?とも思った。

 →世の中が便利になっていくと過保護になっていくという面もあるかもしれない。

・白藤さんはペルソナを1つしか作れない人。

・空子は音と、白藤さんは奏さんと一緒になりたい思っているのに、現実では空子と白藤さん、音と奏さんのペアになっている。一緒になりたい人とは別のペアになっているのが面白い。

・年齢ごとの章立てになっていて、最初は主人公・空子の年齢だと思っていたが、最後まで読むと白藤さんが裏の主人公であり、記載されている年齢は白藤さんのものなのだろうなと思った。

・世界や社会が変わっていく中で人間に残されるものって何なのか?と考えた時に、この物語では白藤さんの「怒り」が答えになっているのではないか。

 →物語終盤で白藤さんが空子に匠くんを一緒に殺してくれと提案するが、実際に犯行に及んでいた場合、白藤さんは何だかんだ罪の意識に苛まれそう。

 →世界に対するものなのか、空子に対するものなのかはわからないけど、「怒り」の感情が白藤さんを生き残らせているのではと想像。


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