2022年1月28日(金)付の南日本新聞のコラム「南点」です。
自分はこの本と出会うために生まれてきたのかもしれないと思ってしまうくらい衝撃的な本との出会いがあります。かなり本末転倒というか、大袈裟ですけど、でも自分の実感としてはそれぐらい深い感動が起きているんですよね。一般的にそれを運命の出会いと形容するのでしょう。
今回のコラムで「運命」という言葉を使っていますが、その出会いが「あらかじめ決まっていたこと」という意味ではなく、「その出会いによってそれ以降の自分が決定づけられること」という意味で私は使ったつもりです。それは自分という存在が、それ以前には戻れない、不可逆になってしまうことだと言ってもいいかもしれません。
コラムの題名は分かりやすさを優先して「運命の出会い」にしましたが、もう一つの候補に「不可逆への愛着」がありました。過去の自分の質的な変化、そしてこれから起こりうるかもしれない自分の質的な変化。偶然的な出会いに潜むそういった自己変容可能性を愛でる傾向が私にはあるような気がします。
「今までで一番影響を受けた本は?」という質問にうまく答えられない事例を今回出しました。コラムで書いたことに付け加えるなら、不可逆への愛着がこの質問への答えづらさに関わっているような気がします。一つ前の質的変化が起きなかったら、その次の質的変化は起きなかったかもしれないという具合に、過去に影響を受けた本同士が関連し合っていると思うのです。だから「一番」を決められないのだと思います。
以上のようなことを、私が古本屋を始めるきっかけになった出来事と絡めて書きました。が、自分の中できちんと整理して考えられていないことと、色々と詰め込み過ぎてしまった感があって、うまく書けませんでした。ただ、私にとっては重要なテーマなので、またいつかどこかできちんと書けるように精進したいと思う次第です。
それと補足ですが、文中で5年前に読書会を始めたと書いていますが、6年前の間違いでした。
私が初めて自分で企画したのは、2015年11月の「積ん読ナイト」で、積ん読している本を紹介し合う読書会でした。同年の7月に古本喫茶 泡沫さんで開催された一箱古本市に参加したのが読書会をやろうと思ったきっかけです。一箱古本市は、つばめ文庫さんが企画したもので、今振り返るとこれに参加してなければ私が古本屋を始めることもなかったかもしれません。人生とは不思議なものだとしみじみと思いますね。
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