マルヤガーデンズの7階にある映画館、ガーデンズシネマさんにて、『マイ・ブックショップ』というイギリス映画が上映中です。※7/5(金)まで
1959年のイギリスが舞台で、主人公の女性・フローレンスが海辺の小さな町で新刊書店を始めるという物語です。
本屋の映画ということで上映前から気になっていました。
さっそく鑑賞しまして、印象に残ったことがいくつかあったので少し書き記してみようと思います。拙い文章ですが、良かったらお読みください。
・店を始める時のワクワク感が良かった。
フローレンスは「オールドハウス」という古びた建物で本屋を始めます。
「オールドハウス」は、最初は埃だらけで汚く暗い印象の建物でしたが、フローレンスが店を始める準備で建物に手を入れたり販売する本を並べていくにつれて生き生きとした空間に変貌していきます。埃を被っていたけれども元々は良い建物なのだというのをフローレンスは分かっていたのかもしれません。直接的な表現や描写はなかったですが、「オールドハウス」を本屋にしたらきっといい店になるだろうというフローレンスの思いがあるように想像できましたし、店を始める時のワクワク感もシンプルに伝わってきて、私はとても好きな場面でした。
・心理描写
登場人物の感情を言葉や行為で直接的に表現するのではなく、海の揺れる波であったり、木の葉が風で揺れる音であったり、自然の風景で登場人物の心理が表現されています。どこか寂しいけれども美しい映像です。流れる音楽もまた良いのが相まって感傷的な気持ちに浸れました。余韻が強く残る映像と音楽です。
・フローレンスの人柄
店を営んでいる身としては、やはり主人公の店主さんの言動や心理に目が行きました。お客さんが本を選ぶのを邪魔しないように配慮する気配りや人を尊重している態度がフローレンスの挙動から垣間見えて、素敵な人物だなと思います。
それと、良質な本を人に届けたい、人が良質な本に触れられる機会を出来る限りつくりたいという、本と人への思いの深さにも心を打たれました。
「オールドハウス」をめぐって町の有力者といざこざが生じて、フローレンスがそれに立ち向かうというのが、この映画の主軸であり見どころです。
物語内でフローレンスの決断や行為を、たびたび「勇気」という言葉で表現していましたが、私は、勇気というよりは、本と人に対する情熱ではないかなと思いました。
良質な本を人に届けたいというのがフローレンスにとって最重要で、それを邪魔する人や行為、出来事に自分を巻き込まないでほしいという感覚があったのではないかと想像しました。「勇気」のある決断や行為に見えないわけではないですが、結果的にそう見えたということであって、私は少し疑問に感じました。この点に関しては、映画をご覧になった方に感想を訊いてみたいです。
以上が、だいたいの映画の感想です。
決して明るい映画ではありませんが、本が好きだったり、本に興味がある方は、心が惹かれるポイントがたくさんあるのではないかなと思います。
私が鑑賞したのは6/23(日)の12時55分上映の回で、上映後に、古書リゼットの安井昌代さんと、つばめ文庫の小村勇一さんのお二人が、イギリスに旅行に行かれた際の古本屋巡りのお話をされました。私はイギリスに行ったことはないのですけど、聞き役としてしれっと一緒に並ばせていただきました。…恐縮です。
お二人とも共通しておっしゃっていたのは、イギリスの風景は、古き良きものがちゃんと残っている街並みで、映画のなかの風景とそんなに違いはないということでした。
映画で見た風景とそう変わらない風景が今もあるのだと思うと感慨深いですし、それを知ったうえで映画を観るとまた一層楽しめるのではないかなと思います。
上映は7/5(金) までやっていますので、ご興味ある方はぜひご鑑賞ください。
0コメント