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【今週の1冊】
『はみだしの人類学 ともに生きる方法』松村圭一郎(NHK出版)
「人類学」と聞くとどのような学問だとイメージするだろうか。
人類学は異文化を理解するための学問というよりも、むしろ異文化との出会い(差異)を通して自分たちの文化とはどのようなものなのかを理解しようと試みる学問だ。
本書は「人類学とはどのような学問であるのか?」や「これからの時代に人類学はどのように役に立つのか?」などを切り口に人類学のエッセンスを語る入門的な本になっている。
著者独自のキーワードを挙げながら人類学の基本でもあるフィールドワークの重要性を強調する。キーワードは「つながり」と「はみだし」の2つだ。
「つながり」は、わたしと他者との間にどのような差異があるのかを比較しながらその関係性自体を相対化するのに使う概念だ。その比較の過程で他者との関係における「わたし」とはどのような存在であるかの理解が深まっていく。
一方「はみだし」は、他者との出会いを通してそれ以前にはありえなかった新しい「わたし」が引き出される体験だという。フィールドワークで長い時間を調査対象の人々とともに過ごすことで、調査開始時には理解できなかった調査対象者の振る舞いの意味や考えが少しだけ理解できそうな瞬間がやって来る。自分と他者との境目が溶けて自己変容するようなこの現象を、著者は「はみだし」と表現している。
自分と他者との差異であったり、自分があたりまえだと思い込んでいたものが揺らぐ体験を手掛かりに、「人間とはどのような存在なのか?」という問いに取り組むのが人類学の面白さだと思う。
これからの時代、AI技術の発達などにより私たちの社会が変質する可能性がある。
そんな時「人間とはどのような存在なのか?」という問いかけが大切で、その問いに取り組み続けてきた学問的蓄積のある人類学がきっと役に立つのではないかと著者は指摘している。
人類学のフィールドワークに比べたら小さいかもしれないが、旅をした時や日常的な事柄のなかでも「わたし」が揺らぐ体験を誰しもしているはずだ。自分が揺らいだ時の感触を思い出しながら人類学の本を読むとより楽しめるのではないかと思う。
人類学(者)の語り口には、自分の中のあたりまえが揺らいでそこからはみだすことをどこか面白がっているような印象を受ける。
人類学的な知の面白さと熱さが詰まっている本だが、とても現代的なタームで「わたし」とは何であるのかの考察も行なっているので、現代社会における「わたし」とはどんなものでありどんな可能性があるのかということに興味がある人にも面白く読める本ではないかと思う。広くおすすめしたい1冊。
【関連しておすすめしたい本】
・『働くことの人類学 仕事と自由をめぐる8つの対話』松村圭一郎+コクヨ野外学習センター・編(黒鳥社)
・『文化人類学の思考法』松村圭一郎 中川理 石井美保 編(世界思想社)
・『メイキング文化人類学』太田好信 浜本満 編(世界思想社)
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